年中通して鹿には外部寄生虫が付いています。春から秋の暖かい時期には大量に、そして冬は鈍化していますが付いています。ここではこれらの虫と、駆除方法について見ていきたいと思います。
外部寄生虫とは
外部寄生虫とは体の外側に寄生している虫です。鹿にはほぼ必ず付いており、奈良公園の鹿も例外ではありません。私の地域では次の3種類が鹿に付いています。
- マダニ
- シカシラミバエ
- ハダニ
そしてもう1種類別のダニが付いているときがあります。
- ヒゼンダニ
ではどんな虫たちなのでしょうか?
マダニ
ほとんどの鹿に付いており血を吸っています。人間に寄生します。SFTSやライム病などに感染する恐れがあるのでに気をつけましょう。なお、マダニは昆虫ではなく節足動物です。
写真のマダニは足が8本あるので成体です。幼体は6本足です。
特に春頃から秋頃までの暖かい時期は鹿にびっしりとマダニが付いてきます。
詳しい生態や特徴はいろんなサイトで紹介されていますのでそちらを参照して下さい。
私は徹底的に対策を行っているので刺されることは滅多にありません。もしマダニに刺されたら引っ張ってはいけないのでティックツイスターを使います。使い方はネジを回すようにダニを引っ張り上げれば口を残さずに取れます。ただし、これを使用するのは自己責任です。刺された場合は素直に病院へ行きましょう。
シカシラミバエ
マダニと同様によくシカに寄生しているのがシカシラミバエです。鹿の血を吸っています。なおこの虫はハエです。ダニと勘違いしている人が多いです。鹿に寄生する前は羽根が付いています。宿主特異性が強いので人間には寄生しないらしいです。
マダニとの比較です。下のマダニは足が8本有るので成体です。5mmぐらいです。
鹿の皮膚を元気に動き回っています。
翅付です。山を散策していると寄ってきました。
参考
ハジラミ
毛を食べるシラミです。血は吸いません。2mmぐらいで細くてほとんど動きません。宿主特異性が強いので人間には寄生しないらしいです。
参考
ヒゼンダニ
疥癬の原因となるダニです。小さすぎて目には見えません。宿主特異性が強いので人には感染しにくいそうです。写真は鹿の胴体の写真です。広範囲に脱毛しておりつつるでした。ただ疥癬の特徴である瘡蓋がないので本当に疥癬かどうかは不明です。別の皮膚病の可能性もあります。下の赤い筋はスプレーです。下の脱毛写真は疥癬ではなく真菌の感染症の可能性があるとのことです。
参考
外部寄生虫の駆除方法
私は捕獲した鹿は必ず持って帰り、家の解体小屋で解体を始めます。ここで重要なのは自分にダニをつけないことと、家や解体小屋周辺をダニで汚染させないことです。そのためには捕獲後に駆除する必要があります。
駆除の方法
駆除の方法はいろいろ試しました。試した方法は次の5つです。状況に合わせて方法を変えたり組み合わせるのがいいです。作業時に雑菌や汚れが飛散するのでマスクが必要です。また乾燥した毛や糞を吸い込むとQ熱になる場合があるので気をつける必要があります。
- ガスバーナー
- 湯むき
- 高圧洗浄機
- 殺虫剤
- ホースとデッキブラシで洗う
ガスバーナー
ガスバーナーで毛を焼く。殺菌・殺虫・除毛が同時に行えるので一石三鳥です。枯れ草を燃やすように火が広がっていきます。またカセットガスは安い物で1本約90円なのでコストもたいしてかかりません。難点はすすが出ることと、火を使うので場所を選びます。肉が焦げてしまうように思えますが全く影響はありません。毛が濡れていると使用できません。
私は鹿をヒッチキャリアに乗せて運ぶので、その上に乗せたまま焼いています。
角の付け根など焦がしたくない場所はバーナーを使わず殺虫剤か熱湯で駆除します。
熱湯(湯むき)
体表に73℃のお湯を掛ける。外部寄生虫は60℃以上で死滅します。また鹿は73℃以上で毛が抜けます。なので、お湯を掛けながら毛を毟り取ることが出来ます。ただし、抜け毛が大量に出るのと、給湯設備が必要なため個人で行うには難しいと思います。虫を殺すだけなら電気ポットを使って部分的にお湯をかけるのが効率が良いです。
なお、豚・猪など皮ごと食用にする場合は湯の温度が低いと皮に細菌が多く残存するらしいです。
高圧洗浄機
高圧洗浄機で体表を洗浄する。あまりお勧めしません。強い水圧のため、汚れと虫が舞い上がり自分や周辺に付着します。レインコート、長靴、マスクが必須です。対策しないと自分が虫と汚れまみれになります。後述の洗浄ノズルとデッキブラシを使用する方が良いと思います。
殺虫剤
殺虫剤をかけて虫を殺す。持ち運びでき手軽に使用できます。ただし毛の奥などはスプレーが行き届きにくく、また大量に掛けないとなかなか死にません。殺虫剤は人や犬猫には無害なので、肉に付着しても問題ありません。
洗浄ノズルとデッキブラシで洗う
洗浄ノズルで水を掛けてデッキブラシでこする。結構きれいになります。高圧洗浄程ではないですが跳ね返りがあるのでレインコート、長靴、マスクが必要です。洗浄ノズルはYM72717を使っています。
駆除の方法を組み合わせよう
それぞれの方法だけでは効率が悪いので組み合わせます。以下がよくやっている方法です。
- 通常時
- 現地で鹿を車(ヒッチキャリア)に乗せた後、殺虫剤を徹底的にかける
- 持って帰ってヒッチキャリアの上で体表をガスバーナーで焼く
- 洗浄ノズルとデッキブラシで洗う
- 体表に汚れが多い時や濡れている場合
- 現地で鹿を車(ヒッチキャリア)に乗せた後、殺虫剤を徹底的にかける
- 持って帰って洗浄ノズルとデッキブラシで洗う
環境やコストにもよりますが、いろいろ試して自分に合う方法を探してみましょう。
まとめ
マダニ以外は人間に感染しにくいですが油断は禁物です。獲物を持って帰る場合は外部寄生虫を確実に処理してリスク対策をしていく必要があります。
さらに外部寄生虫ではないのですが、寄生しているとやっかいな虫がいます。それについては別の記事で紹介する予定です。
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