鹿肉の異常肉(PSE肉やDFD肉など)

ジビエ

鹿を解体しているとおかしな色の肉があります。白っぽい肉または薄いピンク色の肉や、逆に色の濃い肉もあります。これらの肉は捕獲時の状況が原因です。

正常肉と異常な肉たち

肉の色は捕獲時のストレスによって変わります。この肉は3種類あります。その3種類とは正常肉・DFD肉・PSE肉です。これらの原因となるのは「疲弊」と「興奮」によるストレスで、肉のpHを調べればどれに分類されるかがわかります。以下は抜粋です。

正常肉

まずは正常肉。これは普段、店などで売っている肉です。この肉の定義は次の通りです。

正常肉

死後、pH が徐々に低下して、24 時間経過するとpH 5.4 ~ 5.6 程度まで低下します。畜肉では正常な肉とされています。

野生鳥獣被害防止マニュアル p.20

DFD肉 (Dark Firm Dry meat)

次にDFD肉。これは異常肉です。止め差し前に体力を消耗した肉。凄く濃い色をしています。

DFD 肉

生時の疲弊のため、死後ほとんどpH が低下しない肉のことです。肉の色調が暗く,肉汁排出が極めて少なく、肉の表面がドライです。pHが7.0 に近い肉は柔らかいですが、雑菌が繁殖しやすく菌による不快な臭いが生じることもあります。

野生鳥獣被害防止マニュアル p.20

DFD肉 Dark Firm Dry meat

異常肉の一種。と殺後pHがあまり低下せず、肉色が濃く(dark)、肉質がしまって(firm)、切断面が多少乾燥した状態(dry)の肉を指す。PSE肉とは逆の性状を示す。

財団法人日本食肉消費総合センター

PSE肉 (Pale Soft Exudative meat)

最後にPSE肉。これも異常肉です。止め差し前に興奮した肉。豚肉では「ムレ肉」と呼ばれている。色が薄いのでよくわかります。

PSE 肉

止め刺し時の興奮などにより、死後急速にpHが低下する肉のことです。豚肉で良く見られ「むれ肉」とも言われます。急速にpH が低下し酸性下で発熱するためにタンパク質が変性してしまいます。止め刺し後1時間でpH が6.0 より低い場合はPSE の可能性があります。色調が白っぽくなり、多くの肉汁排出が起こります。

野生鳥獣被害防止マニュアル p.20

PSE肉 Pale Soft Exudative meat

肉の断面の色が淡く(pale)、やわらかく(soft)、しまりのない、水っぽい(exudative)状態の豚肉のこと。豚をと殺し、肉をカットするときに発見され、ふけ肉、むれ肉などとも呼ばれている。保水力、結着力が低く、クッキングロスが多く風味も悪い。原因としては遺伝的な形質と、と殺前のストレスなどが考えられている。

財団法人日本食肉消費総合センター

他の異常肉

上記の以外の症状の肉です。主に体表に見られます。

スポット(血斑)

血が斑模様になっており気持ち悪いです。肉が紫色になっていることが多いです。

電気ショックが不十分であったり放血が不正確であったり時間を掛けすぎたりしてしまうと、肉にスポット(血斑)という毛細血管の破裂による点々と血がにじんだ状態になる。

狩猟生活VOL.7 p.98

黄色い筋膜

くくり罠がかかった足に症状が出ていることが多いです。

皮を剥ぐと筋膜が黄色くなっていることがありますが、これも捕獲時の過大なストレスによる影響だと考えられています。

狩猟生活VOL.9 p.84

まとめ

異常肉にせず美味しい肉を捕るには必要以上に興奮させたり体力を消耗させずに止め差しすることが重要になります。獲物は近づくだけで興奮するので、注意しなければなりません。

鹿肉のカラーチャート

上記の3種の肉はpHか色で判断できるので、取り敢えず鹿肉のカラーチャートがないか調べましたが、鹿肉に関する物は見つけられませんでした。ほとんどのカラーチャートはイノシシやブタで、有ったとしてもpHの数値のみ。さてどうしようか困っていたとき、鹿肉を研究している三重大学の教授に会う機会があったので聞いてみました。

PSE肉やDFD肉を調べてもイノシシやブタのカラーチャートしかないのですが

鹿肉も同じと考えてよろしいのしょうか?

 三重大教授
 三重大教授

鹿肉のカラーチャートはありませんが、鹿にも同様にPSE肉やDFD肉があります。

三重大教授
三重大教授

ただ、鹿肉は鉄分が多いため色が濃くなっています。

そのためイノシシ・ブタ肉のカラーチャートよりも濃くなります。

と言うことで、現状はイノシシやブタのカラーチャートを参考にするしかないようです。

実際のPSE肉の写真と味

では実際の写真をみてみましょう。下はPSE肉の写真。私が2022年2月に右前足をくくり罠で捕獲した雄鹿です。他の部位と比較すると右後足の外ももの色がピンク色になっています。

鹿解体
右後足の一部がPSE肉
右後足の一部がPSE肉

右後足をバラした写真。シキンボだけ色が違いますね。

シキンボ、外モモ、シンタマ、内モモ
シキンボ、外モモ、シンタマ、内モモ

右後足のシキンボ(PSE肉)と左後足のシキンボ(正常肉)との比較。色がピンク色です。

右後足シキンボ(PSE肉)と左後足シキンボ(正常肉)
右後足シキンボ(PSE肉)と左後足シキンボ(正常肉)

で、味は?

写真の肉とは違いますが以前PSE肉を焼き肉にして食べましたが、柔らかくて旨い印象でした。恐らく元々鹿肉自体がぱさぱさして硬いためPSE肉になってちょうど良くなったのではないかと思います。結局は好みですね。

なおDFD肉の写真は撮っていません(°°;)
前述にあるように鹿肉は元々色が濃いため個体本来の肉の色なのか、DFD肉なのか判別が付きにくかったので写真は撮っていません。

ちゃんと調べるならpHメーターで測定が必要です。
そのうち、pHメーターを買ってカラーチャートを作って見たいと思います。

なお異常肉のことは狩猟生活VOL.7とVOL.9により詳しく載っているので参考にして下さい。

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