食用で鹿を解体するときには衛生的観点から食道と肛門を結紮(けっさつ)して内容物がでないようにする必要があります。結紮とは結束バンドで縛ることです。ここでは食道結紮について触れていきます。
この食道結紮自体は簡単ですが、ウェブを見ていると少々間違っている方がおられます。
食道結紮をする理由
まずは食道結紮をする理由ですが、食用で解体する場合は鹿を逆さ吊りにします。このとき食道を結紮しておかないと胃の内容物(ゲロ)が口から垂れるため、解体場と道具そして肉を汚染する可能性が高まります。これは寝かせて捌くときでも同じです。汚染された肉は食用として使用できません。
詳しくは「厚生労働省のジビエ ガイドライン」や「小規模ジビエ処理施設向けHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」などを読んで下さい。
何が間違っているのか ~食道と気管の違い~
では、ウェブで紹介されている食道結紮の何が間違っているのかというと、食道と気管があべこべになっています。残念なことにやり方は合っているのに説明が間違っています。猟師の方も勘違いしている方が多く、また市販の書籍では解説が不足しています。
鹿の食道結紮を説明しているネットや書籍には次のように記載されていることが多いです。
首に切れ目を入れ食道を露出させます。食道を引っ張り出し結束バンドで結紮します。
首を切って結束バンドで縛っているだけですが、さて、食道はどれでしょう?
白い蛇腹の管が食道だと思いますか?
違います!!
白い蛇腹の管は食道ではありません!
では、分かり易いように取り出してみましょう。
白い管の横に細い赤い管が付いています。これが食道です。解体の写真ではわからなかった部分です。説明を付けるとこのようになります。
食道は赤く細くゴムのように伸縮性があります。気管は白く蛇腹ホースのように硬いのが特徴です。
このように食道は見えにくいため、気管を食道と勘違いしている方が多く見られます。市販の書籍などでも解体について細かい解説がないことが多いので間違えないようにしましょう。
※写真では胃と心臓は切り離してあるので文字での説明です。
なお結紮は食道と気管両方ともします。気管も結紮するのは、肺の中の汚染された空気が出ないようにするためです。
まとめ
結果的には食道と気管を結紮しているのですが、たまたま上手くいっているだけです。正しい知識を持っていないと知らず知らずのうちに食道を切ってしまう恐れがあります。これは他の部位にも当てはまりますので注意が必要です。
コメント